夢の歌
  
はじまりの島(11)
「それで、こんな古いものが残ったんですね……あ」
 グレッグははっとして顔をあげた。
「差出人もどし? それは戦後のことなのですよね? じゃあ、マヤルは戦後も無事だったんだ」
 グレッグの勢いこんだ様子に、マロリーの顔にわずかに笑みが浮かんだが、すぐに消えた。
「そう願いたいですが……まあ、家人の誰かが追加の切手を貼ってやったとも考えられますから」
「そうか、そうですね」
 グレッグはまた手紙に目を落とした。


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しんあいなるティモシーへ


街の女の子たちのあいだで、異国風のドレスが流行りはじめています。お城の女官たちからも問い合わせが来た、と、リトが自慢していました。でもリトが若いのでびっくりして、採寸されるのを嫌がって帰ってしまったそうです。リトは「あまり男前なのも考え物だな」と言いました。リトは自分では女の子にもてると言っていますが、私はリトが女の子とけんかをしているところしか見たことがありません。女の子たちも、リトのことを話すときは悪いことばかり言います。本当は嫌われていると教えてあげたほうが親切かしら?


ひきがえるさんが「そろそろお別れになるかも知れない」と言いました。私はティモシーとお別れするのがとても辛かったので、ひきがえるさんともお別れしなきゃならないのはとても悲しくなりました。ひきがえるさんは「これはお役目なので、仕方ない」と言いました。王さまの魔法の言葉の力も、時間を完全に止めておくことはできないので、お役目が長く続くと、空の見張り番のけものも、少しづつ年をとってしまうのだそうです。昔からひきがえるさんを知っている人たちから見ると、やっぱり若い頃より色がくすんで来ているそうです。カエルなんだから色くらい気にしなくていいのに。ずっとひきがえるさんと一緒にいたいです。


ひきがえるさんは普通のカエルになって、森に帰るそうです。私は「夢に来るたび王国の森の沼地に行くから、それならまた会えるでしょう」と言いました。でもひきがえるさんは、「会いに来てくれても、どれがそうだか見分けがつかないだろう」と言いました。その頃には、マヤルのことも王国の人たちのことも分からなくなっているはずだし、キスしても変身したりしないから、と言って、グエッグエッと笑いました。ひきがえるさんが笑うところを見たのは初めてです。